最近ご縁があって、兵庫県姫路市の林田町にお伺いする機会が増えています。
中でも「伊勢地区」の田園風景は格別で、車を走らせていると、一面に広がる田んぼがまるで絵画のよう。季節の移ろいが素直に感じられる場所で、訪れるたびに心がふっとほどけるような感覚になります。

そんな林田町の空気を感じてからというもの、スーパーで「林田町産」のシールが貼られた野菜を見かけると、自然と手が伸びるようになりました。
特に春のこの季節は、新玉ねぎや、まだ若い状態で摘まれたレタス——いわゆる“若摘みリーフ”が目に留まります。柔らかくて、えぐみが少なくて、そのままでも十分美味しい。まさに大地のごちそうです。

ただ、こうした素晴らしい農作物の背景には、少し切ない現実もあります。
林田町に限らず、地域では農家さんの高齢化や後継者不足が深刻な問題に。
毎日のように口にしているお米や野菜が「当たり前」でなくなる日が来るかもしれない——そんな危機感を、現地で出会った方々の言葉から感じました。
だからこそ、少しでも農業に目を向けるきっかけを作れたらと思い、今回「すっぽん」とのコラボ料理を考案してみました。
林田町の若摘みレタスと新玉ねぎに、すっぽんの“肺”を香ばしく炒めた香味オイルを合わせた、身体が喜ぶ自然派サラダです。
抗酸化作用に富む若葉野菜と、滋養たっぷりのすっぽん肺からとった天然オイルを合わせた、美容と免疫力を意識した一皿。胡麻油のビタミンEと、コラーゲンを含むすっぽんの肺が、内側から“巡り”と“潤い”を支えます。忙しい日々のエネルギーチャージに。
手に入るもので簡単に作れますが、背景にある命のつながりや、地域の想いを知っていると、一層味わい深くなるはず。
ぜひ一度、林田の野菜を手に取ってみてください。そして、すっぽんの新しい魅力にも出会っていただけたら嬉しいです。
姫路瓢亭西二階町店ふくべ
女将 白倉 夏須美