ある日、大女将から「はい、これ」と糠漬けをいただきました。
浅すぎず、深すぎず、ちょうどよい塩梅で、きゅうりも大根もしゃっきりと。
何気ない手渡しでしたが、その糠床には、きっと長年の手間と愛情が詰まっているのだと思うと、なんだか胸があたたかくなりました。

そんな“発酵の恵み”である糠漬けと、 「すっぽん」の腸活メニューを考えてみました。
例えば、コラーゲンたっぷりのすっぽん煮凝りに、季節野菜の浅漬けを添えて前菜に。
あるいは、すっぽんの赤身焼きに、大根や胡瓜の古漬けを合わせて、口直しと腸活の一皿に仕立てることも。
発酵食品に含まれる乳酸菌や酵母は、腸内環境を整え、免疫力を高める働きがあることはよく知られていますが、
すっぽんもまた、アミノ酸、コラーゲン、ビタミン、鉄分などを豊富に含み、体の内側から巡りを整える食材として重宝されています。
特に薬膳や東洋医学の世界では、すっぽんは「補血・補気・補陰」の食材とされ、
現代人に不足しがちな“血の巡り”や“身体の基礎力”を支える食として、非常に評価が高いのです。
ただ、どちらも共通しているのは、「すぐに得られる効果ではない」という点。
糠漬けは、毎日糠床をかき混ぜて、微生物の働きを守りながら、ようやくあの風味が生まれます。
すっぽん料理もまた、素材選びから捌き、火入れや味付けに至るまで、繊細な工程の積み重ね。
そしてそれを口にすることで、じんわりと身体が変わっていく——まさに「続けること」が大切なのです。
最近では「効率」や「時短」が重視される時代ですが、
あえて手間と時間をかけたものには、それだけで“栄養”以上の価値があるように思います。
そこには、きっと相手のことを思いやる“愛”や“祈り”が込められているから。
健康は、1日で手に入るものではないけれど、
食卓に「発酵食品」や「すっぽん料理」があるだけで、
未来の自分や大切な誰かを少しずつ整えてくれる——そんな気がするのです。
姫路瓢亭 西二階町店ふくべ
女将 白倉 夏須美